合唱手帳

20・30代の合唱愛溢れるメンバーが「歌う楽しさ」を伝えるために立ち上げた合唱サイト。

Nコンで発音のお勉強:「争ってる二人がいた」のア母音を開きすぎるのが危険な理由

 

こんにちは、小春ういです! 今日はNコン中学校の部課題曲『願いごとの持ち腐れ』の発音についてお届けします。

 

 

「争ってる二人がいた」

「争ってる二人がいた」の母音を見ると「ああおっえううあいあいあ」となっています。口の開きが大きい「あ」がたくさん登場しますね。パッと見、明るい響きの母音が多いなと思うのではないでしょうか。

しかし実は、「あ」=口を大きく開けると捉えるのはちょっと危険です。

母音は前後の影響を受けるため、「あ」であってもあまり口が開かない場合もあります。

今日は、「争ってる」の「ら」、「二人が」の「が」、「いた」の「た」、これら3つの母音を見ていきましょう。

 

 

ポイント1:「ら」のとき口はかなり閉じめ

「争ってる」の「ら」を例に取ってみましょう。「ら」のア母音はラ行の子音とサ行の子音に挟まれています。どちらも舌先と上顎が近づくため、口の中の空間は狭めになる発音です。この影響を受け、「ら」のア母音も口の中の空間が狭めの発音になります。

 

「a  r:狭い → a ← s :とっても狭い o  tt  e  r  u」

 

 

ポイント2:「が」のとき口はあんまり開かない

次に「二人がいた」の「が」のア母音を見てみましょう。前はガ行の子音、後ろはイ母音に挟まれています。ガ行の子音は舌の奥が上顎に近づくかたちでそんなに狭い発音ではありませんが、続くイ母音は狭い発音です。この間に挟まれるので「が」のア母音は少し狭めの発音になります。

「r  i  g:ちょっと狭め → a ← i:狭め   t  a」

 

 

ポイント3:「た」のとき口はあんまり開かない

最後に、「いた」の「た」のア母音を見てみましょう。前はタ行の子音がありますが、後ろは何もありません。

まず、タ行の子音は舌先が上顎に近づくかたちで口の中の空間は狭めになります。そして、後ろの「何もない」ですが、これはこれで前の母音に狭めの影響を与えます。それは、発音が終わって口のあたりも声帯もお休み状態に向かっていくため。自然と力が抜けていくからです。

 

「i  t:狭い → a ← 発語が終わって力が抜ける

 

f:id:chorustips:20170509232738j:plain

 

Nコン課題曲の歌い方、好評連載中です。

 

月・木は高等学校の部課題曲『君が君に歌う歌』について。

作詞:Elvis Woodstock(リリー・フランキー)/作曲:大島ミチル

 

火・金は中学校の部課題曲『願いごとの持ち腐れ』

作詞:秋元康/作曲:内山栞/編曲:横山潤子 

 

水は、小学校の部課題曲『いまだよ』

作詞:宮下奈都/作曲:信長貴富 

 

について解説します!

 

 

〈ライター:小春うい〉twitterで記事のこぼれ話もつぶやき中@koharuui

日本語の歌唱を得意とする声楽家・合唱指導者。国立音楽大学卒業。基礎力を大切にした歌唱・指導が特徴。日本語音声学や朗読などを学び、知識を実践に結びつけることをライフワークとする。中学生の時、NHK全国音楽コンクール(通称:Nコン)全国大会出場。高校では合唱部を音楽的に推し進め、初出場で全日本合唱コンクール(通称:朝日コン)全国大会3位相当の特別賞を獲得した。大学・社会人になっても合唱やアンサンブルを続け、海外演奏旅行や海外コンクールなどの経験を持つ。