歌の工程図を書いてみよう!解剖学的に歌い手の身体を読み解く
こんにちは、「合唱手帳」編集部です。
歌い手なら誰もが実感していると思いますが、心体を鍛えるという意味において「歌はスポーツの一種」です。
ただ、スポーツに比べ歌に関する動きは目で確認することが難しく、その分正確なイメージを持つことも難しくなります。その上、身体に関する知識を学ぶことへの意識も薄いのではないかと感じます。体育大学には「解剖学」の授業があって、音楽大学には「解剖学」の授業がないこともその現れではないでしょうか。
そんな「身体」について解剖学的な視点から解説します。
用意するイメージが違えば腕が上がる高さが変わる
まず、身体をどう動かすか? というイメージが違えば、発揮されるパフォーマンスが変わることを実感してほしいと思います。
腕を上げるという動作で試してみましょう。
以下2パターンを行ってみてください。
1)肩に手を当てて、そこから腕がはじまるとイメージして手を上げる
2)鎖骨の身体の中心に近いところに手を当てて、そこから腕がはじまるとイメージして手を上げる
※illustration by フリーメディカルイラスト図鑑
腕の上がりやすさに違いがあると思います。
肩から腕がはじまるとイメージした場合は水平までしか腕が上がらず、鎖骨からはじまるとイメージした場合は真上まで腕が上がったのではないでしょうか。
このように、同じ人の身体でもイメージが違えばパフォーマンスが変わります。
「歌」に関する身体の動かし方は見えないために、すぐにはっきり違いが分かることは少ないですが、それでも同じことがいえます。
人が「歌う」までの工程図を作ってみよう
今回の記事では、歌う時に身体に起こっていることの大まかな流れをお伝えします。
「歌の素は何でしょう? それがどういう工程を辿って歌になるのでしょう?」ということをとってもシンプルにお伝えします。
1. 歌の素は肺で生まれる息
歌は空気の振動です。その空気の振動は人間の体のどこから始まるのかを考えると、それは肺です。
息が肺から上がってくることが歌の最初の形です。
この息が私たちの身体から外へ出るまでにさまざまな影響を受け、「歌」に成長します。
2. 息は、声帯にたどり着くと音を得る
肺から上がってきた息が喉に差し掛かると、声帯によって音が与えられます。人間の身体の構造的にこの状態の音を聞くことはできないのですが、音声学では喉頭原音と呼ばれ、イメージは「ブ゛ー!!!」というかんじ。吹奏楽に詳しい方は「マウスピースを吹いた音」で伝わるかもしれません。
とにかく、雑音がふんだんに含まれた音が鳴ります。
美しい音とはいえない音ですが、莫大な可能性を秘めた音です。この雑音は磨けば光る原石なのです。
3. 声は、口のあたりで加工され、さまざまな音色に変化する
雑音まみれの音はさらに上がって口や鼻のあたりにやって来ます。そして、この口や鼻が、その音色を整えます。一部を増幅することで、雑音まみれの状態から芯の通った音へと変化します。その変化は口や鼻の形によりさまざまで、膨大なパターンの音色を作ることができます。
私たちが喋っている「言葉」も音色の違いです。雑音まみれの音が「あ」になるか「Z」になるかは、舌や顎などがどう待ち構えているかによるのです。
また、微細な音色の変化は「清らかそう」「元気よさそう」「根暗そう」といったニュアンスに影響を与えます。
息→音→音色⇒歌
工程図は、このようになります。
息@肺
↓
音@声帯
↓
音色(言葉)@口のあたり
⇊
歌
これが、歌の工程図です。
肺で息が生まれ、声帯で音が与えられ、口のあたりで言葉やニュアンスを得る。
自分の歌い方をもっと良くしたい! と思ったら、3つの工程うちのどれか一つに焦点を定めてみるのも一つの手です。
それぞれの動かし方のポイントについては、次回以降お伝えします。
明後日、2月3日(金)は、歌の工程図の源流に位置する「肺」についてお伝えします。お楽しみに!