合唱手帳

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1拍の感じ方、間違ってるかもよ。ラテン語発音講座「et」

 

こんにちは、小春ういです。

今日はラテン語「et」の発音についてお伝えします!

 

「et」は英語の「and」に相当する接続詩。

「Gloria」や「Salve Regina」などに登場します。

 

「Gloria」……「et in terra pax ominibus」
「Saive Regina」……「et jesum benedictum frustum venttris tui」
「O vos omnes」……「attendite, et videte」

 

 

そんな「et」は「そして」という接続詞なので、多くの場合次に続く単語の方が重要です。そのため、跳び箱の踏切台みたいに、次の単語へエネルギーを向かわせるように歌えるとスマートです。

 

ですが……「et」で間延びしてしまいスピード感が損なわれてしまう演奏をたびたび耳にします。

今日は「et」が名脇役になってくれる方法をお伝えします。

 

「et」で間延びしてしまう

「Salve Regina」の歌詞を例に、仮に「et jesum」が4分音符・2分音符・4分音符で構成されているとしてお伝えします。「えっと いぇー えー ずむ」というような感じを想像してください。


こういった場合「et」は間延びしやすく、先生から「et間延びしてるよ!」といわれてしまうのです。

そんな場合は、「声がよく響いている時間」で拍を捉えているのかもしれません。

 

1拍の体感時間は変化して当たり前

有声子音・無声子音という言葉を聞いたことはありますか?

 

文字通り、

有声子音は「声帯の振動を伴う子音」つまり音程を付けられる子音

無声子音は「声帯の振動を伴わない子音」つまり音程を付けられない子音です。

 

「et」と「sum」では、「t」が無声子音、「s」と「m」が有声子音です。

「et」と「sum」の声帯が振動している時間を比較すると、「sum」が1拍の間めいっぱい響いているのに対して、「et」は終わりの方で声帯が振動しない時間があるということなのです。

  

「t」は点ではなく線の意識で合わせる

そもそも「t」は時間がかかる発音です。

 

1. 舌が上顎に近づく

2. 舌と上顎が密着して息をせき止める

3. 舌が上顎から離れる

 

このように3つの運動をしています。


「t」のタイミングをあわせるのに点のイメージを持つ方が多いように思いますが、「t」は一瞬では発音できません。数瞬かかります。そして「t」は無声子音なのでその間は音が鳴りません。


「声がよく響いている時間」でいうと、「et」は「sum」よりずいぶん短くなるのが自然な状態なのです。

 

声がよく響いている時間が短くなるのは、その無音の時間が必要だからなのですが、慣れないうちは「間」ができるのは怖いもの。つい無音をなくそうとしてしまいます。

 

「間」の長さは前後のつながりやそのシーンの表現によって変化します。

けれど、「t」は点ではなく線、そして無音の時間は必要な「間」ということを意識してみてください。

 

「間抜け」にはならないでくださいね。

 

 

〈ライター:小春うい〉

日本語の歌唱を得意とする声楽家・合唱指導者。国立音楽大学卒業。基礎力を大切にした歌唱・指導が特徴。日本語音声学や朗読などを学び、知識を実践に結びつけることをライフワークとする。中学生から合唱を始め、NHK全国学校音楽コンクール全国大会出場。高校では合唱部を音楽的に推し進め、初出場で全日本合唱コンクール全国大会3位相当の特別賞を獲得した。大学生・社会人になっても合唱やアンサンブルを続け、海外演奏旅行や海外コンクールなどの経験を持つ。