チラシやプログラムの文章作成時に押さえるべき表記ルール4選
合唱団の多くはチラシやプログラムを自分たちで作成します。美しい写真や絵に重厚なプログラムノート。一見するとその道の専門家が作ったものかと見紛うほどに美しい印刷物を仕上げる合唱団も珍しくありません。
そんなこだわりのチラシやプログラムだからこそ、「表記ルール」にまでこだわってほしい。
今回は、編集者・前田睦が、すぐに使える表記ルールの基本をお伝えします。
一般的な表記が「読まず嫌い」の発生を食い止める!
人は見慣れないものに違和感を抱く性質を持ちます。それは、文章の表記ルールに対しても適用されます。
読みにくさを感じたときに、「これは普段自分が触れている表記ルールと違う」と思う人は、校閲者か編集者かライターか詩人か……文章を意識的に見る習慣を持つ人に限られるでしょう。
一方、そうでない人はふんわりと「なんか読みにくい文章だな」と感じ取ります。内容は良いのに「なんとなく取っ掛かりにくい文章だな」と思われることがあるということなのです。
そんなもったいない状況に陥らないために、これから表記ルールの初歩5点をお伝えします!
1. 読点はなるべく控えめに
まず、よく思うのが「、」を使いすぎる方が多いということ。書き手は親切心のつもりで細かく読点を打っても、読点が多いと文意はつかみにくくなります。日本語は洗練されればされるほどシンプルになる言語です。以下の文例を参考になるべく読点は少なくするよう心掛けましょう。
文例)
この作曲家は、合唱から、映画音楽まで、さまざまなジャンルを手掛ける。
→この作曲家は、合唱から映画音楽までさまざまなジャンルを手掛ける。
詳しく勉強したいなら、こちらの本がオススメです!
2. あえて簡単な表記を使おう
チラシやプログラムの原稿はPCで作られることが多いです。PCは便利な変換機能が付いていて、「読めるけど書けはしない漢字」もすぐ表示してくれます。また、「手で書くときには平仮名なんだけどな……」という単語も漢字に変換してくれます。
そのためか、一般に出回っている書籍や新聞などに比べて漢字表記が多くなっていますが、以下の表現はひらがな書きの方が一般的です。
「様々」→「さまざま」
「色々」→「いろいろ」
「絡み合う」→「絡みあう」
「◯◯して頂けましたら〜」→「◯◯していただけましたら〜」
「お越し下さいまして」→「お越しくださいまして」
「歌詞の中に出て来る」→「歌詞の中に出てくる」
「お願い致します」→「お願いいたします」
誰に見られても隙ない文章にしたいなら、用語辞典の購入をオススメします。
※上記の用語ルールはこちらの用語辞典に添っています
3. 並列の関係には「・」を使おう!
中黒(なかぐろ)、使ったことありますか? 「・」という記号は並列の関係を表します。「、」と使い分けると意味のまとまりが分かりやすくなります。
例)
「本日は、作曲家、指揮者の◯◯先生をお招きして〜」
→「本日は、作曲家・指揮者の◯◯先生をお招きして〜」
「団員は、東京、千葉、神奈川、栃木の4県から集まっています。」
→「団員は、東京・千葉・神奈川・栃木の4県から集まっています。」
意味合い的にも視覚的にも読点はそこで前後のつながりを断つのに対し、中黒は前後を緩やかにつなぎます。読点を使うか中黒を使うかで文章の読みやすさがずいぶん変わります。並列の関係を示すときには中黒を使ってみてください。
4. 記号は全角記号を使おう!
全角記号と半角記号、横幅が違うだけと思っていませんか?
実は、記号の全角と半角は別の記号です。
例えば()と()。
並べると一目瞭然ですが、高さが違います。
日本語は、文字を並べたときに下のラインが一直線に揃う言語です。そのラインの中にきれいにハマるのが全角の()。一方、下にはみ出てラインを乱してしまうのが半角の()。
()は日本語のフォント用の記号で、()はアルファベット用の記号です。
一旦意識し始めると、日本語の文章の中に()があるのは目について仕方ありません。()だけでなくスラッシュやコロンも、日本語に囲まれているときは全角を使った方が自然です。
記号について詳しくなりたいならこちらの本がオススメです。
おわりに
「表記ルール」は学校で教えられはしませんし、明快な正解があるわけでもありません。しかし、人生を通して多くの文章と接する中で、「こういう書き方が一般的だな」「こういう書き方から外れると違和感を抱くな」とぼんやりとしたものが形成されていきます。なるべく多くの人に快適に読み進めて内容に集中してもらうために、本日お伝えした4つのポイントをぜひ使ってみてください。
〈編集者:前田睦〉
WEBメディアの編集者。年に100冊以上の本を読む本の虫。中学・高校時代に合唱部に所属し、NHKの全国大会に出場した経験も持つ。一般の合唱団では広報としてHPやtwitterの運用や動画編集などを担当する、チラシ・チケット・プログラムの作成を担当するなど「聞き手との接点」をつくる役回りを担当していた。