なぜ腹式呼吸がいいの?この問に答えられますか
歌には腹式呼吸がいいといわれ、腹式呼吸を行っている合唱部や合唱団は多くあります。
でも、「なぜ腹式呼吸がいいの」というこの問に答えられますか?
理由を2つくらい即答できなかったら、腹式呼吸を活用できてない証拠かもしれません。
今回は、胸式呼吸と比べた腹式呼吸の強みをお伝えします。
腹式呼吸の強みを知って、それを行えているか確かめてみてください!
腹式呼吸と胸式呼吸のおさらい
以前の記事でお伝えしたように、肺に息を入れるという動きは以下2つに因数分解できます。
1. 横隔膜に力を入れて肺を引き下げる
2. 肋骨を開いて肺を広げる
そして、それぞれの動きが目立つ呼吸法が「腹式呼吸」と「胸式呼吸」と呼ばれるのでした。
1. 横隔膜に力を入れて肺を引き下げる→「腹式呼吸」
2. 肋骨を開いて肺を広げる→「胸式呼吸」
確認を終えたところで、さっそく「腹式呼吸の強み」のお話に入りましょう。
腹式呼吸vs胸式呼吸(1)息の量
「合唱手帳」で何度も登場しているこの画像を見てください。
※illustration by フリーメディカルイラスト図鑑
この画像に横隔膜はありませんが、肺の底面にくっついていると想像してください。
1. 横隔膜を下げるか
2. 肋骨を広げるか
どちらが肺がより大きく広がると思いますか?
それはもちろん「1. 横隔膜を下げる」ですね。
腹式呼吸vs胸式呼吸(2)コントロール
コントロール勝負です。「横隔膜」と「肋骨」はどちらがコントロールしやすいでしょうか。
ここでは動きに関わる筋肉の数を確かめてみましょう。
横隔膜を下げるのに主に動く筋肉はもちろん「横隔膜」です。とてもシンプルです。
一方、肋骨を動かすには「外肋間筋」「内肋間筋」「前鋸筋」「腸肋筋」他、無数の筋肉が関わります(参考:体を緩めるMBA)。肋骨のスムーズな動きには多くの筋肉の連携が必要です。
というわけで、答えは「横隔膜の方がコントロールしやすい」です。
腹式呼吸vs胸式呼吸(3)独立性
歌にとって呼吸はとても大切ですが、他にも大切なものがあります。それは、音色や表情です。どんなにいい呼吸だったとしても、そのために音色や表情が固まってしまってはもったいないことになります。
今回は、音色や表情に関わる顔や首周りの筋肉にどれだけ影響を与えないかを比べて見ましょう。
それはやはり腹式呼吸の圧勝です。
肋骨は「上後鋸筋」を始めとして顔や首近くと筋肉によってつながれているためです。(参考:体を緩めるMBA)
肋骨あたりの筋肉が力むと、喉や顔あたりも力んでしまうのです。
腹式呼吸vs胸式呼吸(4)見た目
最後に、「見た目」を比べます。
一昔前の声楽家ならいざしらず、現代では合唱といえども見栄えが求められます。どんなに豊かな響きで歌っても、表情や佇まいが磨かれてなければ威力は半減です。
その意味においても、やはり腹式呼吸に分があります。
横隔膜の動きより肋骨の動きの方がダイレクトに見た目に影響するということと、肋骨の方が視線を集める顔に近いということの2つの意味から、腹式呼吸の勝利です。
4ラウンド、全制覇
以上4ラウンド、全て腹式呼吸の勝利です。
長く安定した息と見栄えの良さを同時に叶えてくれるため、腹式呼吸は胸式呼吸よりも歌に向いているのです。
ただ、最後に一つ。
これまで「腹式呼吸」と「胸式呼吸」を別々のもののようにして扱ってきましたが、腹式呼吸と胸式呼吸は混ざり合う色の端と端みたいな関係です。
完全に横隔膜のみで呼吸をすることや、完全に肋骨の動きのみで呼吸をするということはありません。どちらの作用が目立っているかというだけのことです。
「腹式呼吸」が歌に向いていると伝えてきましたが、「胸式呼吸」も敵視するするのではなく上手く付き合ってもらえたらなと思います。
長らく肺や呼吸にまつわることをお伝えしましたが、次回は口や舌についてお伝えします。お楽しみに!