腹式呼吸をするとお腹が出るのはアレが潰れるから
「胸式呼吸」と「腹式呼吸」って聞いたことありますか?
さまざまな呼吸法がありますが、この2つは歌い手ならずとも耳馴染みのある代表格だと思います。
腹式呼吸=お腹に息を入れる呼吸法……ではない!
「胸式呼吸は胸に息を入れる呼吸法」「腹式呼吸はお腹に息を入れる呼吸法 」。そんな言葉を耳にすることがあります。
これは初心者に有効な言葉ではありますが、中級者以上には毒になる言葉でもあります。
息は肺にしか入らないからです。
息を「胸に入れる」や「お腹に入れる」というイメージは大体の方角は合っていますが、大まかすぎて目的地に到達できる可能性は低すぎます。
※illustration by フリーメディカルイラスト図鑑
胸式呼吸をすると→胸が動く
腹式呼吸をすると→お腹が動く
これは正しい順番です。
しかし、胸が動くのが胸式呼吸、お腹が動くのが腹式呼吸と言い換えることはできません。
呼吸法のエキスパートになりたいなら、その理由を見つめてみましょう。
胸式呼吸ではなぜ胸が膨らむんだろう
※illustration by フリーメディカルイラスト図鑑
前回の記事で、肺は自分で大きくなったり小さくなったりできないことと、その肺に息を入れるという動作は2つに因数分解できるとお伝えしました。
・横隔膜に力を入れて肺を引き下げる
・肋骨を開いて肺を広げる
この2つです。
このうち、「肋骨を開いて肺を広げる」という動きが目立つのが「胸式呼吸」です。
肺に息を入れるために肋骨を広げる。そのために胸が動くのです。胸式呼吸をうまく使いたいと思うのなら、中の容積を意識して肋骨を広げましょう。
たとえば、肋骨を上方向に上げるのではあまり容積は大きくなりません。背骨を軸に開こうとすることがポイントです。
腹式呼吸は「潰れる」イメージ
続いて腹式呼吸について見てみましょう。
先程もお伝えしたように
腹式呼吸をすると→お腹が動く
これは正しい順番です。しかし、間を飛ばしすぎています。
この間に、2つの工程を入れることができます。
腹式呼吸をすると→◯◯が下がる→◯◯が潰れる→結果としてお腹が動く
◯◯に当てはまる単語を考えてみましょう。
※illustration by フリーメディカルイラスト図鑑
既に確認したように、肺に息を入れるという動作は2つに因数分解できます。
・横隔膜に力を入れて肺を引き下げる
・肋骨を開いて肺を広げる
このうちの「横隔膜」の働きが目立つ呼吸が腹式呼吸です。
これで、一つ目の◯◯が埋まりますね。
腹式呼吸をすると→横隔膜が下がる→◯◯が潰れる→結果としてお腹が動く
では、横隔膜が下がると何が潰れるのかを考えてみましょう。
横隔膜の上には肺があります。では、横隔膜の下には?
内臓です。
胃や腎臓や腸があります。(参考:gooヘルスケア)
つまり、こういうことになります。
腹式呼吸をすると→横隔膜が下がる→内蔵が潰れる→結果としてお腹が動く
お腹の膨らみの正体は内蔵なのです。
また、横隔膜がお腹側は浅く背中側は深いために、内臓はお腹側に押し出される動きが目立ちますが、実は360度全体が少し盛り上がります。
腹式呼吸ができているかを確かめるときは
・お腹のあたりにキツイ感覚があるか
・お腹の前側だけでなく360度に圧力を感じるか
この2つを確認してください。
胸式呼吸と腹式呼吸を見てきました。
次回は、「歌には腹式呼吸」といわれる、その理由に迫ります。